2014年11月15日土曜日

国民が怒りの矛先は・・・

裁判官も人の子ですから、のちのちの判決をする頃まで、尋問で見聞きしたことを覚えているとは限りません。人間の記憶の代わりに、すべては調書にまとめられます。裁判官は、そういう記録だけ読んでいれば、書証と矛盾しない、官僚裁判官好みの形式的には正しい判決を見事に書くことができます。

しかも、裁判官の転勤の問題は先にふれましたが、長びく訴訟ならば途中交替もあり得るので、自分が判決を書くとも限りません。判決を書く後任の裁判官が、まとめて調書を読んだ方が効率的です。そうなると、夜は少しでも遅くまで記録読みと判決書きに没頭し、その睡眠不足を法廷での昼寝で充足するなどということになるのでしょう。

もちろん、国民からすればとんでもないことであるわけですが、法廷に立ち会わない裁判官が判決を書くことなど日常茶飯事なのですから、そちらを許しておいて「法廷での昼寝」に対してだけ国民が怒りを持つのはどうでしょう? なんとなく迫力を欠いているのではないでしょうか。

国民が怒りの矛先を向けるとしたら、昼寝に対してではなく、「法廷で証人の話も聞かないで判決するのはおかしい、なんとかしろ」というのが筋であるはずです。ところが、裁判官は転勤します。この転勤のシステムによって裁判官の官僚統制システムが働いています。「裁判官の独立」という絵に描いた餅を現実に動かしている手続は、この官僚システムです。裁判官は決して独立しては存在し得ないのです。