2012年6月13日水曜日

少子高齢化が深刻な現在

価格の低位安定から「物価の優等生」と言われた鶏卵にも、ついに物価上昇の波が押し寄せた。JA全農たまご(東京・新宿)など鶏卵大手はブランド卵の価格を1日から1パック(10個)あたり30円程度価格を引き上げた。一般卵も需要の落ちる夏場にもかかわらず異例の高値で推移している。

JA全農たまごの「しんたまご」などブランド卵は栄養価が高いなど高付加価値が売りもの。市場シェアは全国で3割強、都市部では5割を超すとみられる。しかし価格は小売りとの年間契約が多く、価格上昇が目立つ一般卵より安くなる「逆転現象」も目立っていた。

卵には需要変化と生産者の増減産に伴う3―5年周期の価格変動と、年間の需給変動による「エッグサイクル」がある。一般に夏場は需要が落ち、1年を通じて最も価格が安い時期だ。しかし今年は一般卵の全農卸値が7月31日も1キロ195円(Mサイズ=1個の平均重量が61グラム)と前年同月平均を50円も上回った。

丸紅エッグ(東京・中央)の島田博社長によるとトウモロコシなど穀物価格の高騰が波及してブロイラーの飼料コストは過去2年で1キロ60円程度上昇している。さらに低迷した需要も年初の中国製冷凍ギョーザの中毒事件をきっかけに、弁当の総菜を冷凍食品から卵焼きに切り替える家庭などが増え、前年を上回っている。

物価の優等生と言われたのは大規模化などによる生産効率の向上と、90年代までの1990年代までの飼料価格の低位安定という2つの要素に支えられた側面が大きい。現在、2番目の要素=飼料コストは価格の押し上げ要因に変わった。

全農Mサイズの最高値は第2次石油危機時の1981年12月23日に記録した434円。同年は年間平均も342円を記録した。島田社長は「需要が伸びていた70年代と少子高齢化が深刻な現在は違うが、飼料価格の上昇が続けば300円台乗せはあり得る」と予想する。

2012年6月2日土曜日

食の安全にかかわる不祥事

農薬・飼料の使用や原料に配慮した自然食品が、ドイツで急速に広がっている。BSE(牛海綿状脳症)や食肉の虚偽表示など「食の安全」を脅かす問題が相次いだこともあって、消費者の関心が高まり、大手スーパーも商品の拡充を急いでいる。

フランクフルト市の中心部にある大手スーパー「テンゲルマン」の店舗では、一般の野菜や果物に隣接して「Bio(ビオ)」表示の青果売り場が常設されている。ニンジンの価格は10本ほどのパックで通常、約1ユーロ(約150円)。ビオ表示のニンジンはほぼ2倍だ。トマトやリンゴもビオの方が割高だが、在来品とビオ食品の違いを記載したパンフレットでPRするなど販売に工夫を凝らす。

ドイツの自然食品は「リフォルムハウス」などと呼ばれる一部の専門店で販売されてきたが、ニッチ(すき間)な存在に過ぎなかった。大きな転機となったのは、1991年に欧州連合(EU)が有機農法の原料使用や生産管理を法令化したこと。ドイツでは2001年にEU規制に基づくビオ表示制度が始まった。

ビオの表示は、継続的に生産履歴などを管理していることを示す。20年前から自然食品の販売を始めたテンゲルマンなど大手スーパーが相次いで導入し、今では青果、食肉、ハム・ソーセージ、パン、パスタなど約200品目が手軽に買える。業界推計によると、昨年のドイツでの売上高は約40億ユーロ(約6000億円)で、市場規模は5年前の2倍に増えた。

最近、賞味期限が何年も前に切れた冷凍食肉や食用に向かない部位が出荷され、ソーセージなどの原料になる事件が相次いでいる。大手スーパーではひき肉などの賞味期限の書き換えが発覚。連邦政府も罰則強化の検討に乗り出している。

かつて欧州を揺るがしたBSEの対策が整備されても、食の安全にかかわる不祥事は後を絶たない。ドイツのビオ食品ブームは、安全な食品を求める消費者心理と、低価格競争よりも品質を売り物にしたい流通各社の思惑が推進役になっているようだ。