2012年6月2日土曜日

食の安全にかかわる不祥事

農薬・飼料の使用や原料に配慮した自然食品が、ドイツで急速に広がっている。BSE(牛海綿状脳症)や食肉の虚偽表示など「食の安全」を脅かす問題が相次いだこともあって、消費者の関心が高まり、大手スーパーも商品の拡充を急いでいる。

フランクフルト市の中心部にある大手スーパー「テンゲルマン」の店舗では、一般の野菜や果物に隣接して「Bio(ビオ)」表示の青果売り場が常設されている。ニンジンの価格は10本ほどのパックで通常、約1ユーロ(約150円)。ビオ表示のニンジンはほぼ2倍だ。トマトやリンゴもビオの方が割高だが、在来品とビオ食品の違いを記載したパンフレットでPRするなど販売に工夫を凝らす。

ドイツの自然食品は「リフォルムハウス」などと呼ばれる一部の専門店で販売されてきたが、ニッチ(すき間)な存在に過ぎなかった。大きな転機となったのは、1991年に欧州連合(EU)が有機農法の原料使用や生産管理を法令化したこと。ドイツでは2001年にEU規制に基づくビオ表示制度が始まった。

ビオの表示は、継続的に生産履歴などを管理していることを示す。20年前から自然食品の販売を始めたテンゲルマンなど大手スーパーが相次いで導入し、今では青果、食肉、ハム・ソーセージ、パン、パスタなど約200品目が手軽に買える。業界推計によると、昨年のドイツでの売上高は約40億ユーロ(約6000億円)で、市場規模は5年前の2倍に増えた。

最近、賞味期限が何年も前に切れた冷凍食肉や食用に向かない部位が出荷され、ソーセージなどの原料になる事件が相次いでいる。大手スーパーではひき肉などの賞味期限の書き換えが発覚。連邦政府も罰則強化の検討に乗り出している。

かつて欧州を揺るがしたBSEの対策が整備されても、食の安全にかかわる不祥事は後を絶たない。ドイツのビオ食品ブームは、安全な食品を求める消費者心理と、低価格競争よりも品質を売り物にしたい流通各社の思惑が推進役になっているようだ。