2016年3月15日火曜日

陪審員の経験は法的センス向上のチャンス

多分、それはこういうことでしょう。刑事陪審だけならば、人々は「イヤだな、陪審員がまわってきちゃったよ。くだらない犯罪に付き合わされるなんて困ったものだ」と本音のところでは思い、刑事裁判が終わっても似たような感想しか持てない人が結構いるかもしれません。

それはひょっとすると、刑事弁護に携わった弁護士の無力感というか、失望感のようなものに似ているのではないかと想像します。こんなことを言うのは不謹慎ですが、刑事弁護をやりたがらない弁護士が多い理由の一つにそういうことがあります。

他方、民事裁判の陪審員がまわってきたら、やっぱり最初は「イヤだな、くだらないトラブルを起こして。ちゃんと話し合って解決してほしかったよな」と思うかもしれません。しかし、実際に双方の言い分を聞いて、どちらが正しいか、社会としてどう対応すべきか、自分が当事者の立場になったらどうなのか……。

そうしたことをあれこれと考えることが結構いい経験になり、そういう人々が大勢出てくることで、日本人の契約センスや法的センスが磨かれ、おかしな社会常識の見直しなども進むのではないかと思います。それによって、人々の社会に対する責任感といったものも育まれていくことも期待できます。二十一世紀の日本は、そういう方向で進んでいくべきではないかと思うのです。