2014年6月11日水曜日

雇用保険制度へ転換した最大の理由

一九七三年に突発的に生じた石油ショックは、日本経済に深刻な影響を与えました。雇用にも大きな影響が及び始め、完全失業率は二%を超えました。このような時代状況を背景に、雇用政策の一大転換が行われました。失業してからの対策だけでなく。失業の予防を重視する政策への転換です。

本来、雇用の維持・安定は第一次的には個別企業の自助努力によるものです。雇用創出にむけた環境整備、金融や財政、税制上の措置は国の産業政策として打ち出されます。従来、雇用政策は産業政策や経済政策の後追い的政策とみられてきました。深刻な経済情勢を理由に、雇用対策の抜本的な拡充を求める声が、産業界や労働界で強まってきました。そこで失業保険から雇用保険への大転換が行われたのです。

雇用保険制度へ転換した最大の理由は、失業予防を雇用政策で行おうとするものでした。そのため、雇用保険の雇用安定事業として雇用調整助成金制度が創設されました。不況で労働者を休業させたり、職業訓練を受けさせた場合。その従業員の賃金の一部を助成金として支払うものです。

創設以来、多くの企業で利用され、失業予防に一定の役割を果たしたという評価があります。一方、この助成金があるため、マクロ的には日本経済の構造転換が遅れるとともに、個別企業の体質強化、新事業への進出意欲などを阻害した、という批判も近年聞かれるようになりました。

バブル崩壊後の経済不況のため、完全失業率は、一九九〇年代後半には四%を超えるようになりました。日本の雇用政策は一九七〇年代半ばに大転換が行われ、その骨格を動かさないままでした。高失業率時代に対応した、新たな雇用政策が求められています。